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村上春樹 評論本を評価する

村上春樹の評論本をこの3か月ほど読み漁っていました。
全38冊、せっかく読んだので、どの本が面白かったか
採点してみようと思いました。
 
完全な独断と偏見で採点します。
自分の好みとしては
 
①基本的に長い本は嫌い、短い本が好き
②難解な本は嫌い、わかりやすい本が好き
③とはいえ、専門家ならではの鋭い視点、分析があるとGOOD
 
このようになっており、②はわかりやすさ、③は面白さを考慮し
採点しています。
 
☆☆☆☆☆:費用を気にせず購入したいと思った
☆☆☆☆:お金を払って買う価値はあると思った
☆☆☆:お金を払う価値はないが、読んで損はないと思った
☆☆:お金を払ってまで読む必要はないと思った
☆:特段読まなくてよいと思った
 
最初に7作品、「これは良い」と思ったものを赤字で抜粋しています。
 
■村上春樹イエローページ1(加藤 典洋)
総合 ☆4
面白さ ☆4
わかりやすさ ☆3.5
 
村上春樹の小説を読んだことがある人なら、より小説が楽しめるようになる。
『風の歌を聴け』、『1973年のピンボール』、『羊をめぐる冒険』、
『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』が分析の対象となっている。
特に『風の歌を聴け』、『1973年のピンボール』の分析は非常にわかりやすく、
かつ視点が面白い。後の2巻も含めて文庫化された稀有な解説本。
 

 
 
■芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか(市川 真人)
総合 ☆4
面白さ ☆4
わかりやすさ ☆4
 
芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったかを当時の世相を踏まえ
丁寧に解説する。筆者は王様のブランチのブックコメンテーター。
内容的には難しいことにふみいるが、解説はわかりやすい。
村上春樹以外に太宰治や夏目漱石も論ずるが、それも面白い。お勧めの一冊。
 

 
 
■愛ゆえの反ハルキスト宣言(平山瑞穂)
総合 ☆4
面白さ ☆4
わかりやすさ ☆3.5
 
村上春樹があまり好きではないという作家。
わかりやすいし、作家が書いているだけあって、洞察分析もかなり深い。
 

 
■一冊でわかる村上春樹(村上春樹を読み解く会)
総合 ☆4
面白さ ☆4
わかりやすさ ☆4.5
 
ページは200ページ前後で短く文章も読みやすい。図や太文字が多くわかりやすい。
『風の歌を聴け』~『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』までの長編と
代表的な短編の解説を収録している。作品分析にも、けっこういいことを書いている。
 

 
■ねじまき鳥の探し方(久居 つばき)
総合 ☆4
面白さ ☆4
わかりやすさ ☆4
 
『ねじまき鳥クロニクル』の多様な読み方を教えてくれる。
深読みしすぎと思わないこともないが、かなり踏み込んで解説してくれ
説明もわかりやすい。
『ねじまき鳥クロニクル』を読んだことがある人は読んで損はない一冊
 

 
 
■村上春樹を歩く(浦澄 彬)
総合 ☆4

面白さ ☆4

わかりやすさ ☆4
 
200ページもなく、文章も読みやすくさっと読める。
作品中、東京を散歩した『ノルウェイの森』などから、そのコースを分析し、
背後に含まれている意味を探し出す。分析の視点が非常に面白い。
作品を読んだことがある人には「こういう読み方もあるのか」と楽しませてくれる一冊。
 

 
■妊娠小説(斎藤 美奈子)
総合 ☆4.5
面白さ ☆4.5
わかりやすさ ☆4.5
 
読みやすいし、視点はユニークでとても面白い。
村上春樹本ではないので、『風の歌を聴け』が全体の一部だけのっているくらいで
他は別の作者の作品を論じている。
分析は非常に独自で面白いので、村上春樹部分だけでも購入の価値はある。
 

 
 
■リトル・ピープルの時代(宇野 常寛)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆2.5
 
近代の大きな物語が崩壊した後の世界を村上春樹の作品やウルトラマンのから、
解説していく。社会学的な目線は面白いが、やや自分にはわかりにくく、
半分いかずに投げ出してしまった。ページは500ページ以上ありそこそこ長い。
 

 
 
■村上春樹イエローページ3(加藤 典洋)
総合 ☆3.5
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆3
 
『アンダーグラウンド』、『約束された場所で』、『スプートニクの恋人』、
『海辺のカフカ』、『神の子たちはみな踊る』、『1Q84』という比較的後期の解説を収録。
イエローページは一巻目のインパクトが特大だが、こちらもわかりやすく面白い。
解説本としての出来は悪くないと思う。
 

■村上春樹イエローページ2(加藤 典洋)
総合 ☆3.5
面白さ ☆3.5
わかりやすさ ☆3.5
 
『国境の南、太陽の西』、『ダンス・ダンス・ダンス』、『ノルウェイの森』、
『ねじまき鳥クロニクル』の解説を収録。
作品としても代表的な作品で、分析も面白く、わかりやすい。
 

 
 
■村上春樹の「物語」―夢テキストとして読み解く(河合 俊雄)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆3
 
村上春樹の作品を夢分析的な観点から記述した一冊
中でも近代自我論が面白かった。読解に心理学的な知識は必要になる。
 

 
■「騎士団長殺し」の「穴」を読む(谷崎 龍彦)
総合 ☆2
面白さ ☆2
わかりやすさ ☆2
 
「騎士団長殺し」をセクシャリティー的に分析した一冊。
視点は独自だが、個人的には理解するのが大変で難解に感じた。
 

 
 
■村上春樹論 「海辺のカフカ」を精読する(小森 陽一)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆2.5
 
『海辺のカフカ』の分析書。
作品からエディプス・コンプレックス 団塊の世代論、戦争論等などの
理論に踏み込んでいく。新書にしては話がちょっと難解に感じ、
わかるようなわからないような感じだった。
 

 
 
■村上春樹と≪最初の夫の死ぬ物語≫(平野 芳信)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆3.5
 
読みやすい。
ページ数は200ページほど、文字も大きいし、(物理的な)行間も広く
読み進めていくのに余計なストレスは感じなかった。作品分析も悪くない。
 

 
■新・書物の解体学(吉本 隆明)
総合 ☆2.5
面白さ ☆2.5
わかりやすさ ☆2.5
 
『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』、『ノルウェイの森』、
『ダンス・ダンス・ダンス』450ページほどある中で、村上春樹作品が書かれているのは
10ページほどだった。その他のページは他の作家の分析が書かれている。
プロの人の評判は良いが、何か難しく、あまり内容が入ってこなかった。。
 

 
■MURAKAMI 龍と春樹の時代(清水 良典)
総合 ☆3
面白さ ☆3.5
わかりやすさ ☆3.5
 
村上春樹と村上龍。W村上と言われた二人の違いを当時の時代背景を抑えつつ、
比較分析する。読みやすく、書いてあることも面白いお勧めの一冊。
 

 
■思春期をめぐる冒険(岩宮 恵子)
総合 ☆3.5
面白さ ☆3.5
わかりやすさ ☆3.5
 
著者は心理カウンセラーで、精神分析的な観点で村上春樹作品を論じる。
実際に相談に来た患者の方々のケースも匿名で取り上げて、それと村上春樹作品の
人物や物語を読み比べるというスタイル。この手を本は理論が難しくついていくのが
きついときもあるが、この本は文章は読みやすく、分析的にも深いことを書いていて、
とても良い本だと思った。
 
 
 
■村上春樹「騎士団長殺し」メッタ斬り!(大森望、豊崎由美)
総合 ☆3
面白さ ☆2.5
わかりやすさ ☆4
 
対談方式で会話調、二人のテンションも高く読みやすさは◎
すらすら入ってくる。あまり深い作品分析をしているとは言えない。
 

 
 
■神話が考える(福嶋亮大)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆2
 
ラノベから村上春樹までを論じた幅広い文学論
村上春樹の部分は10~20ページほど
少し学術的で読みづらいが、分析的には面白かった。
 

 
■村上春樹語辞典(ナカムラクニオ、道前 宏子)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆5
 
用語集。図柄が多く、読みやすいことはこの上ない。
深みのある分析はないが、村上春樹にまつわる言葉や作品の舞台などを
詳細に書いてくれているので、村上春樹が好きな人にはとても良い本だと思う。
 

 
 
■村上春樹 「喪失」の物語から「転換」の物語へ(黒古一夫)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆2
 
『風の歌を聴け』~『1Q84』までの長編を解説。
文學好きの専門家がみっちり書いたという感じで
やや素人には読みづらかった。
 

 
 
■村上春樹で世界を読む(重里徹也 三輪太郎)
総合 ☆3.5
面白さ ☆3.5
わかりやすさ ☆3.5
 
会話調形式でわかりやすいし、書いていることも深いところまで
踏み入っていて面白い分析をしている。対象作品は長編全般で広くカバーしている。
 

 
 
■村上春樹×90年代(横尾 和博)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆2.5
 
文字が大きく、余白もあるので読みやすい。
200ページないので、さくっと読める。
『ねじまき鳥クロニクル』、『国境の南、太陽の西』を詳しく解説している。
 

 
 
■村上春樹 全小説ガイドブック(洋泉社編集部)
総合 ☆2.5
面白さ ☆2.5
わかりやすさ ☆4
 
短編も含めてカバー範囲が非常に広い。
普通の解説本では扱わないマニアックな作品も扱っている。
文字が大きく、図も多く読みやすい。分析としては作品を浅く広くという感じ。
 

 
 
■象が平原に還った日(くわ 正人、久居 つばき)
総合 ☆2.5
面白さ ☆2
わかりやすさ ☆3
 
記述は思っていたよりわかりやすい。
ただ、特に面白いと思える分析はなかったので、辛めの評価とした。
対象作品は初期三部作と『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』、
『ノルウェイの森』。
 

 
 
■村上春樹超短編小説案内 あるいは村上朝日堂の16の超短篇をわれわれはいかに読み解いたか(波瀬 蘭)
総合 ☆2
面白さ ☆2
わかりやすさ ☆3
 
文字は大きく行間も空いているので、読みやすい。
超短編は他で分析している解説本が少ないので希少である。
ただ、読んでいてあまり面白いと感じる批評はなかった。
 

 
 
■謎の村上春樹(助川幸逸郎)
総合 ☆2.5
面白さ ☆2.5
わかりやすさ ☆3.5
 
文章はすらすら入ってくるし、読みやすい。
悪くはないのだが、自分としては、そこまで面白い分析はなかった。
 

 
 
■文壇アイドル論(斎藤 美奈子)
総合 ☆2.5
面白さ ☆2.5
わかりやすさ ☆3
 
村上春樹作品は一部で、大分部は他作家の批評となっている。
基本的に批判的だが、村上春樹作品以外が多いので、村上春樹好きには
あまりおすすめしない。
 

 
 
■村上春樹いじり(ドリー、なかむらるみ)
総合 ☆3.5
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆5
 
アンチ村上春樹を自称する作者が作品をこきおろす。
作品より面白いという評判はわかる。確かに冷静につっこんでみると
おかしいところだらけの村上春樹作品をテンション高くつっこんでいく。
楽しく読める一冊。読み物として面白い。
 

 
 
■村上春樹スタディーズ 2008-2010(今井 清人 編集)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆2.5
 
他の「スタディーズ」と同様で、オムニバス形式で書かれている。
12名の論者がそれぞれの視点で村上春樹の作品を分析している。
面白さは他の「スタディーズ」と同じくらいか、ちょっと下くらいだった。
2008-2010とあるが、普通に『風の歌を聴け』の分析とかもあり、
必ずしも2008年前後の作品の分析ではない。
書く人によって当たりはずれがある。最初の松本健一さんの評論が面白かった。
 

 
 
■村上春樹スタディーズ2005~2007(今井 清人編集)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆2.5
 
11人の評論家がそれぞれの章で批評を展開する。
わかりやすい人とわかりにくい、面白い人とそうでない人が
全体的に一般人には少し読みづらい感があり、学術向けかもしれない。
当たりの章は人によっては面白い。
 

■村上春樹スタディーズ2000~2004(今井 清人編集)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆2
 
12人の評論家がそれぞれの章で批評を展開する。
わかりやすい人とわかりにくい、面白い人とそうでない人が
全体的に一般人には少し読みづらい感ありで学術向けかもしれない。
文章としては読みにくいが、我慢して読めば発見はあるかもしれない。
 

 
 
■村上春樹論 -サブカルチャーと倫理-(小森 陽一)
総合 ☆2
面白さ ☆2
わかりやすさ ☆2
 
サブカルチャーで見知ったアニメの名前などは出てくるが
全体的に何を言いたいのか理解できなかった。
 

 
 
■村上春樹の読みかた(菅野 昭正)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆2.5
 

6人の批評家が章立てで解説する。
つまらないわけではないが、学術向けっぽく、素人が前のめりで読むにはきつかった。

 

■村上春樹とドストエフスキー(横尾 和博)
総合 ☆2.5
面白さ ☆2.5
わかりやすさ ☆2
 
村上春樹のことというより、ドストエフスキーの記述のボリュームが多く
ドストエフスキーにも興味と知識がないときつい。
 

 
 
■村上春樹 人と文学(平野芳信)
総合 ☆3
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆3
 
作品の分析というより村上春樹作者のことが詳しく書いてあり
村上春樹について知りたい人には良い本である。
※作品鑑賞もあるが、ページは少なめ。
 

 
 
■村上春樹とアメリカ(吉田 春生)
総合 ☆2.5
面白さ ☆2.5
わかりやすさ ☆2.5
 
アメリカ文学の知識がないとつらい。
つまらないわけではないが、特に読みやすくも面白くもないという微妙な作品だった。
研究者向けにはいいのかもしれない。。
 

 
 
■村上春樹とハルキムラカミ(芳川 泰久)
総合 ☆3.5
面白さ ☆3
わかりやすさ ☆2.5
 
心理学用語が多く、少し一般の人には読みにくい。
学術向けっぽい一般受けは狙ってなさそうな本。
ただ、心理学をベースにした分析は鋭く、専門的知識がある人なら読む価値はあるかもしれない。
 

 
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