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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

あらすじ

主人公多崎つくるは、高校時代に4人の友人と仲の良いグループを形成していた。

そして、赤松 慶(アカ)、青海 悦夫(アオ)、白根 柚木(シロ)、黒埜 恵理(クロ)と

つくるの5人の中でつくるだけ名前に色を持っていなかった

つくるは、ある日他の4人を代表したアオから突如

おまえとはもう顔を合わせたくないし、口も聞きたくない」と告げられる。

それから、死のことしか考えられなかったつくるも36歳になり、

鉄道会社で駅を作る仕事ついていたが、2つ上の彼女沙羅から

4人に会って話を聞いてきなさい」と促され・・・

感想

一言で言うと、思春期から成長し、その過程で負った傷を乗り越え

何者かになる話だと思っている。

作中の言葉を借りると、「ナイーブで傷つきやすい少年から

「一人の自立したプロフェッショナル」への変化ということなる。

少なくない人が、思春期を乗り越え大人になっていく過程で

忘れられない苦しみを味わう。

いつもの村上春樹作品の場合、主人公の僕がその話を一方的に聞いて

人々の物語りを引き受けるということをする。

今回は、主人公のつくる自身がつらい経験をしてそれを誰かに打ち明ける、

そしてアカ、アオ、クロもつくるを切り離したことに苦しんでおり、その話を

同時に聞き受けもするといういつもと少し違う構成になっている。

(普段一人称だが、この作品は三人称であることも特徴だ。)

色彩とは

色彩の解釈は難しい。

あえて言うなら、生まれもったもの、譲りうけたもの、生まれて時あった環境という

少し抽象的な表現になってしまう。

まず、色=土着性といえる。

つくるは元々色がなく、大学に行った時に地元から離れる。

色の持つ他の4人は地元にとどまる。

クロに会った時、シロとクロは下の名前で呼ぶように(柚木と恵理)、

アオとアカはそのままで良いとつくるは言われる。

シロは浜松、クロはフィンランドへ、それぞれ地元を離れており

アオとアカは地元にとどまって生きている。

また、色=親から受け継がれたものともいえる。

日本人の名前の特性もあるが、色は全員名前ではなく苗字である。

色を持つ人物はその色を親から受け継いだのだ。

最後まで色を保っていたアカが地元で親のコネを活かして仕事をしていたのと比較し

色を持たないつくるは、親の不動産を借りるくらいで、親が築き上げた大きな事業を

受け継ぐことに全く興味を示さず、親の失望を買ってしまう。

誰しも、良くも悪くも親から先天的に譲り受けたものや

育っていく環境は最初は選べない。

そこで、「色」に抵抗するか、「色」から脱するか、それぞれの行動をとる。

自分としては、この作品は、そんな、誰しもが青春期~青年期に直面する

悲しみや苦しみを伴うこの問題を色彩ということで表現しているとみている。

ちなみに、灰田の父が出会った緑川というピアニストは

先天的なピアノの才能を持っていたが、生きるのが嫌になり死を求めていた。

いい色を持てば人生がうまくいくというわけでもなさそうだ。

シロの事件

シロの事件はいくつかの可能性で説明できる。

①つくるが二重人格であった。

②シロの頭がおかしくなった(想像妊娠ではなかったので、可能性低)

③ネットにあるように父親が犯人

個人的には①~③のどれでもない。

完璧な調和を保っていた集団も、大人になるにつれ、変化せざるを得ない。

シロがレイプされたことは、その大きな衝撃がある変化が起こったことを

暗示しているのであり、シロが死んだことは、そのような変化に耐えられない人物

もいるということを暗示していると思っている。

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