あらすじ
親譲りの無鉄砲で子供の頃から損ばかりしていた。
母に先立たれ、残った父と兄とは仲がよくない、
可愛がってくれるのは下女の清だけである。
何となく勢いで物理学校に入り、学校からの紹介で卒業後に
松山の学校に教師として就職する。
そこは辺鄙な田舎で、周りの教師は西洋かぶれの赤シャツ、それに媚びる野だいこ、
校長面したたぬきなど、個性的な面々
生徒たちからも新任の教師ということで様々なことでいたずらを仕掛けられる。
坊ちゃんのまっすぐな気性に、保守的な学校の気質は合わず、
同朋の山嵐とともに、赤シャツが裏で行っている悪だくみを暴き、
こんなところ辞めてやると決意する坊ちゃんなのであった。
江戸と明治の対立
よく指摘されることだが、
登場人物に江戸時代側の人物と明治時代側の人物で対立構造がある。
■江戸
・坊ちゃん:江戸っ子、竹を割ったような武士の気質
・清:坊ちゃんが好き、明治維新で零落、それ以前(江戸)では名家
・山嵐:会津出身、会津藩は明治維新の時最後まで抵抗、白虎隊が有名
■明治
・赤シャツ、野田:西洋かぶれ、インテリ
・兄:同じくインテリ
漱石自身の価値観は江戸よりだったとも聞いたことがある。
明治的な新しい価値観を暗に批判しているともとれる。
時間経過の早さ
これもよく指摘されるがスピード感が早くテンポよく進んでいき読みやすい。
物理学校に入学してから3年間はたった三行で終わる。
在学中のエピソードなどもっと書いてもよさそうだが、どんどん進む。
清が駅のホームに見送りに来てから、次の行で松山の船に乗っている。
移動中のことも一切書かず、どんどん進む。
坊ちゃんの親について
丸谷才一は、清は、主人公である坊っちゃんの生みの母であるという説を提出した
これは記事を書く時に見たWikipediaで初めて知った。
確かに、坊ちゃんは家族となじめておらず、血がつながっていないのなら理解できる。
ただ、解せないのは冒頭の
親譲りの無鉄砲で子供の頃から損ばかりしている
という一文である。
清も坊ちゃんの父親も無鉄砲というような記載はない。
清が母親で、父親と清ができていたと考えることもできるが、
清と坊ちゃんの年が離れすぎている気もする。
個人的には、親が違うとしたら、坊ちゃんは零落した清の家の息子で
清とは血がつながっていないけど、家が落ちぶれた時、清と一緒に家を出ることに
なったんじゃないかと思っている。
清が「坊ちゃん」と呼んでいて、何かと世話を焼いているのはそのためだろう。
親も坊ちゃんのような江戸気質の男で、明治的気質の一家とそりが合わず
実際に冷たくされているのだ。
「親譲りの無鉄砲」とは清からこっそり本当の親ことを聞かされ出てきたのではないか。
ちょっと深読み、強引な解釈だけど、自分はそう思っている。