あらすじ
ローマのシーザーは
その天才的な軍人としての功績と確かな政治家としての手腕で
絶大な力と民衆からの支持を誇っていた。
だが、シーザーをよく思わない人物も少なからずいた。
「持っている力が強すぎる、彼を生かしていくことはローマにとって得ではない」
彼らはひそかにシーザー暗殺を企て、実行してしまう。
当然、シーザーを支持していた民衆達は、暗殺実行犯に説明を求める。
実行犯の代表者であるブルータスは
「すべてはローマのため、シーザーは泣く泣く刺した」演説し、
民衆から支持を得ることに成功する。
安心したブルータスはその場を去り、
その後、シーザーの腹心だったマーク・アントニーが演説をする。
アントニーは決して、「ブルータスを殺せ」とは言わない。
ただ、シーザーの遺体を見せ、その偉大さをひたすら説くのである。
移ろいやすい民衆の心は完全にアントニーのものとなり・・・
感想
①後だしは最強だよねという話
確かに、アントニーの演説はうまかった。
だけど、言い争いの場合、人間後から聞いた人の話の方に感情移入しやすいと思う。
アントニーとブルータスの話す順番が違かったらどうなっていただろうか?
②論点の切り替えという演説のうまさ
とはいっても、アントニーの演説は有効に機能する。
もしお前たちに涙があるなら、今こそ思うさま流す時だぞ。
みんな、知っているな、このマント。忘れもしない、シーザーが、初めてこれを身につけた時の ことは。
夏の夕暮れ、戦場のテントの中で、そう、ネルヴィー人を攻め滅ぼした、
あの日だった。
見ろ、この裂目を。キャシアスの短剣が刺し貫いたその痕だ。見ろ、これを。
あのキャスカが、憎しみに駆られて短剣を突き立てたその裂目。
そして、これが、あのブルータスの─ ─ あれほど深くシーザーに愛されていたあのブルータスの、短剣を突き刺したその刃の痕。
このように、ブルータスは悪だと述べず、シーザーの偉大さと
無念さをとうとうと述べていく。
ブルータスの話では「ローマのためなのか、どうなのか」という論点だった。
その論点で真っ向から反論したら意見は割れただろう。
アントニー論点を全く違うところにすり替え、
「シーザーが可哀そうか可哀そうでないか」に切り替えてしまった。
シーザーの実際の遺体と切り傷を見せられたら、誰だって同情してしまうだろう。
③戦争での間違い
シナ「いや、私は詩人のシナだ。」
市民四 「八つ裂きだ、下らねえ詩なんぞ書きやがって。八つ裂きだ。 」
シナ 「私は謀反人のシナではない。」
市民四「そんなこと知るか。名前がシナだ。そんな名前、こいつの心臓からむしり取れ。」
確か、小田島さんのどこかの本に書かれていたが、
戦争では名前が同じというだけで間違えて殺されてしまうことがあるんだなと。
印象に残ったセリフ
太っている男は危険?
おれのそばに置くのは、肥った男だけにしてもらいたいな。
【中略】あそこにいる、あのキャシアス、瘦せこけて、飢えた顔をしている。 ものを考えすぎる。ああいう男は危険だ。
シーザーが暗殺の主犯、キャシアスについて発言する場面。
確かに、言われてみれば示唆に富んだセリフかもしれない。
シーザーについて
こういう話を読むと、やっぱり器が違うなと思う。
この時カエサルはエーゲ海を船で渡っていたが、途中キリキアの海賊に囚われの身となった。海賊は身代金として20タレントを要求したが、カエサルは「20では安すぎる、50タレントを要求しろ」と海賊に言い放ち、その間海賊に対して恐れもせずに尊大に接するだけではなく、「自分が戻ったらお前たちを磔にしてやるぞ」と海賊に対し冗談すら言った。
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