※猫の事務所のあらすじはこちらから
人種差別っぽい記載
一番書記は白猫でした、
二番書記は虎猫でした、
三番書記は三毛猫でした、
四番書記は竃猫でした。
竃猫といふのは、これは生れ付きではありません。生れ付きは何猫でもいいのですが、夜かまどの中にはひつてねむる癖があるために、いつでもからだが煤できたなく、殊に鼻と耳にはまつくろにすみがついて、何だか狸のやうな猫のことを云ふのです。
ですからかま猫はほかの猫には嫌はれます。けれどもこの事務所では、何せ事務長が黒猫なもんですから、このかま猫も、あたり前ならいくら勉強ができても、とても書記なんかになれない筈のを、四十人の中からえらびだされたのです。
冒頭から人種差別っぽい記載があります。
肌(毛?)の色で判断されています。
役所の仕事に対する意見?
書記はみな、短い黒の繻子の服を着て、それに大へんみんなに尊敬されましたから、何かの都合で書記をやめるものがあると、そこらの若い猫は、どれもどれも、みんなそのあとへ入りたがつてばたばたしました。
けれども、この事務所の書記の数はいつもただ四人ときまつてゐましたから、その沢山の中で一番字がうまく詩の読めるものが、一人やつとえらばれるだけでした。
上記のように、倍率が高く簡単にはつけない仕事のようです。
ただ、事務所に入ってからやる仕事は、書いてあることを読み上げるだけのようで
入ってからは能力を活かした仕事をしている感じではないですよね。
役所の仕事に対する宮沢賢治なりの認識を書いたのかもしれません。
※現場を知らず、必ずしも役所=楽な仕事というわけでもないと思ってますが。。
獅子が命じた解散について
獅子が命じた解散、それに続く語り手の「ぼくは半分獅子に同感です。」という終わり方が
この話の大きなポイントだと思います。
いちおう、いろいろな猫から頼られているこの事務所を勢いだけで解散していいのかな
という実利的な問題はあるかと思ってます。
何かあった時に、安易にやめるという判断も、猫の仕事ではないですが、
お役所的な対応の感じがします。
かま猫が今後どうするのかわかりませんが、また同じ目に合う可能性もありますし、
解散はあまり本質的な解決策とは思えません。
ただ、語り手自身も「半分賛成」→「半分反対」という意思表示しかしておらず、
どうするべきというのは明示していません。(できなかった?)
同様な問題はけっこう身近にあると思いますが
それに対してどうするべきなのか読者に考えさせる、問いかける良い終わり方です。